
冬の終わりかけの夜、部屋の窓から見える街灯がぼんやりと滲んでいた。気温はまだ低く、吐く息が白く見えるような日が続いている。そんなとき、ふと自分の体がこわばっているのに気づく。肩に力が入っていて、呼吸も浅い。いつの間にか、知らず知らずのうちに緊張していたのだ。
体を温めることの大切さを、改めて感じるようになったのは最近のことだった。以前はそこまで意識していなかったけれど、ある日、友人が淹れてくれたジンジャーシナモンティーを飲んだとき、体の芯からじんわりとほどけていく感覚があった。その瞬間、ああ、体って正直だなと思った。温かさは、ただ物理的な温度だけではなくて、心にも届くものなのかもしれない。
自律神経という言葉を、最近よく目にする。それは体の中で勝手に働いてくれている、見えないけれど大切なシステムだ。寒さや緊張、ストレスが続くと、このバランスが乱れやすくなる。すると、眠りが浅くなったり、疲れが抜けにくくなったりする。逆に言えば、体を温めてリラックスすることで、そのバランスは少しずつ整っていく。
私には、夜に「感じたことメモ」を書く習慣がある。その日のちょっとした出来事や、心に引っかかったこと、誰かの優しさや、自分の小さな失敗。何でもいいから、手を動かして書き留める。それをすることで、頭の中がすっきりして、眠りに入りやすくなる気がしている。
そのメモのなかに、最近書いたのが「自分への問い合わせ」という項目だった。今の自分は、ちゃんと休めているか。無理をしていないか。本当に必要なことに、時間を使えているか。そんなふうに、自分に問いかけてみる。すると、意外と答えは出てこない。でも、それでいいのかもしれない。問いかけること自体が、自分を大切にする行為なのだと思うから。
ある晩、湯船にゆっくり浸かりながら、窓の外を見ていた。湯気が立ち上り、視界がぼやける。体が温まってくると、自然と呼吸が深くなっていく。そのとき、子どもの頃に祖母の家で入った五右衛門風呂のことを思い出した。あのときも、こんなふうに体がほぐれていく感覚があった。温かさは、記憶とも繋がっているのかもしれない。
睡眠の質を高めるために、いくつかのことを試してみた。寝る前にスマホを見ない、部屋を少し暗くする、軽いストレッチをする。どれも小さなことだけれど、続けていくうちに、朝の目覚めが変わってきた。体が軽く、気持ちも前向きになる。それは、夜にしっかり休めているからだと思う。
「ゆる予定づくり」というのも、最近取り入れている習慣のひとつだ。次の日にやることを、ざっくりと決めておく。ただし、きっちり時間を決めるのではなく、「午前中にこれをする」くらいの緩さでいい。そうすることで、心に余白が生まれて、焦らずに過ごせる。
ストレスというのは、目に見えないけれど確実に体に影響を与える。それを完全になくすことは難しいけれど、少しでも軽くすることはできる。温かい飲み物を飲む、好きな音楽を聴く、ゆっくり深呼吸をする。そういう小さな選択の積み重ねが、自分を守ることに繋がっていく。
夜、布団に入る前に、部屋の照明を少し落とす。その静かな時間が、一日の終わりを優しく包んでくれる。体を温めて、心を緩めて、ゆっくりと眠りに入る。そんなリズムを、少しずつ取り戻していきたいと思っている。






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