夜更けのノートと、身体が教えてくれること

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最近、寝る前に小さなノートを開く習慣ができた。表紙が深緑色の、手のひらサイズの「ルナ・ジャーナル」という名前のそれは、文房具店でふと目に留まったものだ。ページを開くと、ほんのりとバニラに似た紙の香りが鼻をくすぐる。そこに、その日に感じたことをメモしていく。大げさなことではない。「今日は妙に肩が軽かった」とか、「夕方、急に眠くなった」とか、身体が発したちいさな声をそのまま書き留めるだけだ。

ある秋の夜、いつものようにベッドに腰かけてノートを開いた。窓の外では虫の声が静かに響いていて、部屋の照明は少し暗めにしてある。そのとき、ふと思った。自分は自分の身体に、どれだけ問いかけているだろうか、と。「今、何が必要?」「どこが疲れてる?」そんなシンプルな問いを、意外にも忘れている日が多い。ノートに書き出すことで、ようやくその問いに向き合えている気がした。

そして、もうひとつ。予定を”ゆるく”立てるようになった。以前は、スケジュール帳にびっしりと予定を詰め込んでいたけれど、いまは違う。「明日の午後は、できれば白湯を飲んでゆっくりする」「週末は、日の当たる場所で本を読む」といった、ふんわりとした予定だ。それが、驚くほど心を軽くしてくれる。

ある日、友人が家に遊びに来たとき、彼女がカップを手渡してくれた。温かいハーブティーだった。受け取ろうとしたとき、指先がカップの縁にぶつかって、少しだけお茶が揺れた。こぼれはしなかったけれど、一瞬ふたりとも動きを止めて、そのあと思わず笑ってしまった。彼女は「ごめん、熱かった?」と言いながら、少し照れたような顔をしていた。

そのカップを両手で包んだとき、じんわりと伝わってくる温もりが、肩から腕にかけて広がっていくのを感じた。身体を温めるって、こういうことなのかもしれない。内側からじんわりと、ゆっくりと。急ぐ必要はない。自律神経も、きっとそうだ。急に整えようとするのではなく、温かいものに触れて、ふうっと息を吐いて、そうやって少しずつ調整されていく。

子どもの頃、風邪をひいて寝込んだとき、母が湯たんぽを布団に入れてくれたことがあった。あの、じんわりとした温かさと、毛布越しに感じる安心感。いま思えば、あれも身体を温めることの大切さを教えてくれていたのだと思う。

夜、ノートを閉じて明かりを消すと、部屋はすとんと静けさに包まれる。ストレスは完全には消えないかもしれないけれど、少なくとも「今日もちゃんと自分に向き合えた」という安心感は残る。それが、良質な睡眠へとつながっていくのだろう。深く、静かに、身体が休まっていく。

朝起きたとき、身体が軽いと感じる日がある。それは、きっと夜の過ごし方が正しかったという、身体からのメッセージだ。自分に問いかけ、ゆるやかに予定を立て、温かさに触れる。そんな小さな積み重ねが、若々しさや健やかさを支えているのかもしれない。

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