
五月の朝、カーテンの隙間からやわらかい光が差し込んでくる。ベッドの中でまだ目が覚めきらないまま、ぼんやりと天井を見上げていた。そういう朝に限って、なんとなく身体が重い。冷えている、と気づく。足先が、じんわりと冷たい。
最近、「感じたことメモ」というものをはじめた。大げさなものではなく、その日の朝や夜に自分の身体と心の状態をひと言ふた言書き留めるだけ。「今日は肩がかたい」「なんとなく眠れなかった」「夕方から頭が重い」。そんな、誰かに見せるわけでもない小さな記録だ。これをつけ始めてから気づいたことがある。冷えている日は、決まって眠りが浅い。そして眠りが浅い翌日は、気分もどこかざわついている。身体と心は、思っていた以上につながっていた。
「感じたことメモ」は、いわば自分への問い合わせだ。「今日の私、どんな調子ですか?」と、自分自身に静かに聞いてみる行為。忙しい日々の中で、この問いかけを忘れていると、気づかないうちに疲れが積み重なっていく。自律神経はとくに正直で、ストレスや冷えや睡眠不足にすぐ反応する。交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、眠れない、疲れがとれない、気持ちが落ち着かないという状態が続く。それが「なんとなく不調」の正体だったりする。
子どもの頃、祖母がよく言っていた。「冷えは万病のもとよ」と。当時はあまりピンとこなかったけれど、今になってその言葉が身にしみる。身体を温めることは、自律神経を整えることに直結している。とくに就寝前の入浴は、深部体温をいったん上げてから下げることで、自然な眠気を誘う。シャワーだけで済ませていた頃より、湯船にゆっくり浸かるようにしてから、眠りの質が変わった気がする。
そんな小さな発見を積み重ねながら、最近は「ゆる予定づくり」も取り入れている。カチカチにスケジュールを埋めるのではなく、「今週は木曜の夜に湯船タイムを入れる」「週に一度、早めに布団に入る日をつくる」といった、ゆるやかな自分との約束だ。架空のインテリアブランド「ルーナ・ソワレ」のアロマキャンドルを灯して、ぬるめのお湯に浸かりながら深呼吸する。そのたった20分が、翌朝の目覚めをずいぶん変えてくれる。
ちなみに先週、湯船に浸かりながら「感じたことメモ」を書こうとして、スマホを持ち込んだら湯気で画面が曇って何も見えなくなった。完全に自分のせいなのだが、「お風呂はデジタルデトックスの場所だよ」と身体に教えてもらった気分だった。
良質な睡眠は、美しさと若々しさを保つための、もっとも手軽で確かな手段のひとつだ。高価なスキンケアも大切だけれど、夜に身体を温めて、ゆっくり眠ることの力は、案外あなどれない。自律神経が整うと、肌のターンオーバーも、心のバランスも、少しずつ変わってくる。
まずは今夜、自分への問い合わせをしてみてほしい。「今日の私、ちゃんと温まれていた?」と。その問いが、やさしい眠りへの入り口になる。






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