眠れない夜に気づいた。「ゆる習慣」が、わたしの体を静かに変えていった話

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梅雨の晴れ間、午後9時を少し過ぎた頃のことだった。窓の外から遠くで蛙の声がして、部屋の中はひんやりとした空気と、アロマディフューザーから漂うヒノキの香りが静かに混じり合っていた。その夜、わたしはいつものようにソファに倒れ込んで「疲れた」と呟いたあと、ふと気づいてしまった。疲れているのに、眠れていない、と。

思えば、子どもの頃は布団に入れば3秒で落ちていた。親にそう言うと「羨ましい」と笑われたものだが、今や枕に頭をつけてからスマートフォンを1時間眺めるのが日課になっていた。これはさすがに、何かを変えなければまずい。

そこで始めたのが、寝る前のストレッチだった。最初は「なんとなく」だった。ヨガマットを広げて、両腕を上に伸ばして、それだけで終わることもあった。ところが続けていくうちに、何かが変わり始めた。

ゆっくりとした動作で筋肉を伸ばす静的ストレッチには、心拍数や血圧を下げ、副交感神経の働きを活発にするという、通常の運動とは真逆の効果がある。
つまり、夜のストレッチは「体を動かす」というより「体のスイッチをオフにする儀式」に近いのだ。それを知ったとき、なんだか腑に落ちた気がした。

ストレッチと一緒に取り入れたのが、深呼吸だ。
腹式呼吸をすると副交感神経が優位になってリラックスできるため、ストレッチの前に取り入れるのがおすすめで、ストレッチ中も引き続き腹式呼吸を意識すると、筋肉のこわばりがほぐれて力が抜けやすくなる。
鼻からゆっくり吸って、口からそっと吐く。たったそれだけのことが、1日分のざわめきをじんわりと溶かしてくれる感覚があった。

さらに最近、ゆる筋トレも朝のルーティンに加えた。激しいものではない。「ルーチェフィット」というブランドのガイド動画を参考に、壁に手をついてのスクワット10回と、寝転んだまま足を持ち上げる腹筋もどき。始めた翌朝、鏡の前でドヤ顔をしたら、寝ぐせが盛大についていて、少し笑えた。

自律神経をリラックスさせると共に、少し深部体温を上げることで、布団に入ったとき一気に体温が下がりやすくなり、眠りに入りやすくなる。
体を温めることは、眠りの質を整えるうえで思いのほか大切な鍵を握っている。ストレッチで筋肉をほぐして血流を促すことも、その「温め」の一環だ。冷えたまま布団に入るより、じんわりと温もりを帯びた体で眠りにつく方が、朝の目覚めが全然違う。

年齢とともに深部体温の高低差や自律神経の切り替えがつかなくなり、深く眠れなくなる人が増える。
だからこそ、意識的に体を整えるルーティンが必要になってくる。難しいことではない。ストレッチと深呼吸とゆる筋トレ。この三つを、毎日少しずつ重ねていくだけでいい。

就寝前はできるだけスマートフォンやPCの画面を見ず、アロマオイルや心が落ち着く音楽などを楽しむ時間を作ることも、自律神経を整えるうえで大切だ。
眠りの質は、寝る前の「過ごし方」が大きく左右する。それはつまり、良質な睡眠は一夜にして成らず、ということでもある。

ヒノキの香りが漂う夜に、ゆっくりと体を伸ばす。深呼吸をひとつ。それだけで、今日という一日が、少し丁寧に終わっていく気がする。若々しく、健やかでいたいと願うなら、まず今夜の「ゆる習慣」から始めてみてほしい。

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