
秋の気配が漂いはじめた夜、窓の外でかすかに虫の声がしていた。ベランダに干していたバスタオルを取り込んだとき、ほんのり残る外の冷気と、室内の温かさの境目に立ちながら、ふと思った。「今日は、ちゃんとお風呂に入ろう」と。
ノーメイクデーを意識するようになったのは、ここ最近のことだ。スキンケアだけで過ごす週末、肌に何も塗らない素顔の時間。それは「手を抜く日」ではなく、肌を、そして自分自身を丁寧に見つめ直す時間だと、少しずつわかってきた。そのノーメイクデーと相性が抜群なのが、夜の入浴時間だと思う。
入浴によって血行が促進されて体が温まると、自律神経にも良い作用をもたらす。自律神経には交感神経と副交感神経があり、双方がバランスを取りながら心身の健康を維持している。
一日中スマホを握りしめ、頭の中で何かをぐるぐると考え続けた日ほど、湯船のふちに腕をかけて、ただぼーっとしていたい。
入浴は就寝の1.5〜2時間前に行うのが最適とされている。入浴後に体温が自然に低下するまでの時間を考慮したもので、自然な眠気が促進される。
だから私は最近、21時台にお風呂を済ませるようにしている。最初の頃は「まだ早い」と感じていたのに、今ではこの時間が一日の中でいちばん好きな瞬間になっている。
お湯の温度は38〜40度。
42度を超える熱いお湯に浸かると交感神経を優位にさせ、心身を興奮状態にしてしまう。
だから少しぬるいかな、と感じるくらいがちょうどいい。最初は物足りなかったけれど、慣れてくるとこのやわらかな温度が、体の芯にじんわりと届いてくるのがわかる。
入浴剤に含まれるアロマ成分は自律神経のバランスを整えるのに効果的とされており、特にラベンダーやカモミールの精油を含む入浴剤は、リラックス効果やストレスの軽減を促進する。これらの香りは入浴中に蒸気と共に立ち上り、嗅覚を通して脳に作用し、心身のリラクゼーションをもたらす。
先日、「ルナ・ボタニカ」というブランドの入浴剤を試した。カモミールとヒノキを合わせた香りで、湯気とともにふわりと広がった瞬間、思わず目を閉じた。子どもの頃、祖母の家のお風呂場でかいだ木の香りに少し似ていて、胸の奥がゆるんだ気がした。
ぬくもりアイテムとして、最近はバスタイムの後にすぐ羽織れる厚手のルームウェアも手放せない。お風呂上がりに急いで着替えようとして、袖に頭を通してしまったことがある。一人でじわじわ笑いながら着直した、あの夜もなんだか悪くなかった。
傷ついた細胞が修復・再生されるという本来の意味での疲労回復は、入眠直後の深い睡眠中に分泌される「成長ホルモン」によって行われる。
だから良質な睡眠は、美しさと若々しさを保つための、何よりのぬくもりアイテムとも言えるかもしれない。入浴時間を整えることは、そのまま眠りの質を整えることにつながっている。
入浴中は副交感神経が働いて緊張がほぐれると同時に、浮力効果も加わって、心身ともに穏やかな状態になる。
ストレスを手放す場所として、お風呂はこんなにも身近にあった。特別な場所に行かなくても、今夜の入浴時間が、自分を整える最初の一歩になる。
ノーメイクの素顔で、ぬるめのお湯に浸かって、好きな香りに包まれながら、ただ静かにいる。それだけで、明日の自分が少し変わる気がする。






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