「感じたことメモ」が、わたしの眠りと体を変えた話

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秋の夜、午後9時をまわったころ。窓の外からかすかに金木犀の香りが漂ってきて、気がつけばわたしはソファにぐったりと沈み込んでいた。肩がじんわり重い。手足の先が、少し冷たい。「あれ、今日もなんか疲れたな」と思いながら、それをそのまま見過ごしていた——以前のわたしは、そういう人間だった。

きっかけは小さなことだった。友人がカフェで「最近ね、感じたことメモって始めたんだよね」とさらっと言いながら、陶器のカップをそっとテーブルに置いたあの瞬間。その仕草が、なぜかずっと頭に残った。

ある日の朝、カーテンの隙間からオレンジ色の光がするりと差し込んで、「最近、ちゃんと眠れているかな」とふと思った。
そこからわたしも、一冊のノートを手に取ることにした。難しいことは何もない。「今日は手足が冷えた」「夕方から頭が重かった」「なんとなく眠りが浅かった気がする」——そういうことを、短くでいいから書き留めるだけ。

「自分への問い合わせ」という言葉が、最近じわじわと広まっている。他の誰かの声ではなく、自分の体や心に「今どんな状態?」と問いかけること。感じたことメモは、まさにその入口になる。
書き続けていくうちに、自分のリズムが少しずつ見えてきた。水曜日の夜はなぜか眠りが浅い。夕食後にスマホを長く見た日は、翌朝の目覚めがだいたい重い。そういう「感覚の記録」が、静かに積み上がっていく。

自律神経研究の第一人者として知られる順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、日記を書くことで自律神経の切り替えがスムーズになると伝えており、切り替えがうまくいけばぐっすり眠れるようにもなるという。
自律神経というのは、わたしたちが意識しなくても勝手に働いてくれているものだけれど、だからこそ、乱れていてもなかなか気づけない。感じたことメモは、その「気づき」をそっと手伝ってくれる道具なのだと思う。

睡眠の質を高めるノート習慣は、「頭の中の気がかりやモヤモヤを外に出し、脳に”今は考えなくていい”と伝える」ためのシンプルな仕組みだ。
夜、アロマキャンドルをひとつ灯して、ノートを開く。架空のインテリアブランド「ルミネスト」のリネンブランケットに足を包みながら、今日の自分を振り返る時間。これがわたしの「ゆる予定づくり」の一部になった。スケジュール帳に書くのは仕事の予定だけじゃなく、「今日は湯船に入る」「夜9時以降はスマホを置く」「寝る前に白湯を飲む」——そういうことも、一緒に書くようにした。

足湯でも、湯たんぽでも、ぬるめのお風呂でも。体の芯からじんわりと温まると、副交感神経が優位になり、体が「休んでいいよ」というモードに入っていく。
体を温めることの大切さを、メモを続けるなかで改めて実感した。冷えはただの「寒さ」じゃない。眠りの浅さとも、朝の重だるさとも、じつはつながっている。

続けていると、「不安になりやすい場面」「疲れているときに選びがちな行動」のパターンが見えてくる。これは、いわば自分専用の「心の取扱説明書」だ。
パターンが分かると、「今日は疲れているから、早めにお風呂に入ろう」と自然に動けるようになる。義務感じゃなく、自分への思いやりとして。

2026年のキーワードは「納得感」。「どう見られるか」より「どう在りたいか」、内側に豊かさをつくる動きが本格化している。
感じたことメモは、まさにその流れに乗った習慣だと思う。特別な道具もいらないし、完璧に書かなくていい。ちなみにわたしは始めて4日目に、ノートをソファの下に落として見失ったけれど、それでもなんとか続いている。

今夜もまた、金木犀の香りが窓の外からやってくる。ノートを開いて、ペンを走らせる。「今日は少し、眠れそうな気がする」——そう書いた夜の眠りは、不思議とやわらかい。

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