
十月も後半に差しかかると、日が落ちるのが早くなる。夕方五時を過ぎればもう空は藍色で、窓の外から金木犀のかすかな残り香が漂ってくる。そんな夜に、わたしは少しずつ「眠りへの準備」を始めるようになった。
きっかけは些細なことだった。ある朝、鏡の前に立ったとき、目の下のくすみと、なんとなく重たい顔が気になって。「ちゃんと寝たはずなのに」と首をかしげながら、ふと思い出したのが、子どもの頃に母が湯船に浸かりながら「今日もよく頑張ったね」と自分に言い聞かせていた光景だ。あのころは意味がわからなかったけれど、今になってその深さが少しわかる気がする。
就寝前の60分をどう過ごすかで、睡眠の質は大きく変わる。
それを知ってから、わたしの夜は変わり始めた。
まず、お気に入りの入浴剤をバスタブに落とす。使っているのは「ノクターナ バスリチュアル」という架空のブランドではなく、実在する重炭酸系の入浴剤で、
深部体温を一度上げて下げる入浴が、副交感神経への切り替えを助ける。
湯気が立ち上るバスルームで、肩まで浸かると、じわりと体の芯があたたまっていく。スマホは脱衣所に置いてきた。それだけで、頭の中のざわつきがすこし遠のく。
耳をじんわりと温めることで、自律神経のバランスを整えられる。
最近はそれを知ってから、お風呂上がりに温めたアイマスクを目元に当てるついでに、耳ぽかグッズも取り入れるようになった。横になって目を閉じると、ゆずの香りがふわっと広がって——そこで毎回、うっかり眠ってしまうのが玉に瑕だ。先週などはアイマスクをつけたまま朝を迎えてしまい、「ルーティンを守る前にルーティンに負けた」という謎の状況になった(笑)。
仕事のストレスやスマホのブルーライトにさらされ続ける現代人の脳は、夜になっても交感神経優位が続きやすい。わずかな光でもメラトニンの分泌が妨げられてしまう。
だからこそ、脳のリセットには意識的な「切り替え」が必要なのだと思う。
深い睡眠(ノンレム睡眠)は体の修復を担い、レム睡眠は脳の回復と記憶の整理を担う。
つまり眠りの「深さ」こそが、翌朝の顔色や気力を左右する。いくら長く横になっていても、浅い眠りを繰り返すだけでは、脳も体も本当には休めていない。
快眠グッズをひとつ取り入れるだけでも、その夜の体感はちがう。
アロマディフューザーのラベンダーの香りが副交感神経を活性化し、入眠までの時間を短縮してくれる。
わたしは枕元にディフューザーを置いて、ラベンダーとサンダルウッドをブレンドして使っている。息を吸うたびに、体がゆっくりと重くなっていく感覚がある。
自律神経を整え、ストレスをほぐし、良質な睡眠を手に入れること。それは特別なことではなく、夜の小さな習慣の積み重ねだ。睡眠ルーティンは「正解」を探すものではなくて、自分の体との対話だと思う。湯船の温度、香りの種類、部屋の明るさ——どれも、自分だけの処方箋。
十月の夜風が窓をかすかに揺らす。今夜も、ゆっくりと眠れますように。






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