
四月の夜は、まだ少しだけ肌寒い。窓の外からは、どこかの家の夕飯の香りが漂ってきて、ああもうこんな時間かと気づく。スマートフォンを置いて、ふと自分の肩に手を当てると、ガチガチに固まっていた。それが、私が「夜のストレッチ」を始めたきっかけだった。
もともと運動は苦手だった。子どものころ、体育の授業で前屈をするたびに先生に「もっと伸ばして!」と言われ続け、ストレッチというものにどこか苦手意識があった。大人になってからも、ジムに通おうとヨガマットだけ買って、三ヶ月間クローゼットの奥で眠らせたこともある(ちなみに、そのマットは今も現役で眠り続けている)。
でも、ある夜に変わった。
お気に入りのハーブティー「ヴェルデノワール カモミールブレンド」をマグカップに注いで、ほんの少しだけ体を動かしてみた。両腕をゆっくり上に伸ばして、息を吸い込む。そのまま長くゆっくりと吐いていく。深呼吸というのは、こんなに気持ちのいいものだったのかと、少し驚いた。
息を吐くときには副交感神経が優位になると考えられており、呼吸のリズムにあわせて自律神経も切り替わるような仕組みがある。
難しい話は抜きにして、ただ「ふー」と息を吐くだけで、肩の力がすっと抜けていく感覚があった。
ストレッチを続けるうちに、ゆる筋トレも少しずつ取り入れるようになった。腹筋を意識しながら背骨を丸めたり、お尻の筋肉をじわっと締めたりする、本当に「ゆる」いもの。汗もかかない。息も切れない。それでも、翌朝の体の軽さがじわじわと変わってきた。
ゆっくりとした動作で関節や筋肉を伸ばすストレッチには、副交感神経を優位にする働きがあるため、寝る前に行うのもおすすめだ。
体を温めることの大切さも、このころに実感した。
眠るときには体をリラックスモードにする副交感神経が優位になっていることが必要で、寝る前に深部体温の上下がスムーズに訪れることが良質な眠りにつながる。
お風呂上がりにストレッチをすると、体の芯からじんわりと温かさが広がって、布団に入ったときに自然と眠気が押し寄せてくる。冷えた体のまま横になっていたあのころとは、まるで別人のようだった。
ストレッチをするときは深い呼吸を意識しながら、ゆっくり動くのが大切だ。
焦らなくていい。完璧にやらなくていい。ただ、夜の静けさの中で自分の体と向き合う時間を持つこと。それだけで、ストレスで張り詰めていた一日が、少しずつほどけていく感じがする。
四月の夜風が、カーテンをそっと揺らしている。カモミールの湯気が白く立ちのぼり、床の上に座った私は、また今夜もゆっくりと深呼吸をする。ストレッチ、深呼吸、ゆる筋トレ。どれも特別なことじゃない。でも、この三つが重なった夜だけ、私はちゃんと眠れる気がしている。
若々しくいたいとか、美しくありたいとか、そういう気持ちは誰にでもある。でも、その土台にあるのは、きっと「よく眠れた朝」なのだと思う。今夜、試してみてほしい。






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