夜9時の床の上で、体はちゃんと正直だった——ストレッチ・深呼吸・ゆる筋トレで整える、自律神経と眠りの話

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秋の夜、窓の外からかすかに金木犀の香りが漂ってきた。もうそんな季節か、と思いながら、わたしはヨガマットの上に仰向けになる。時刻は夜9時すぎ。天井の照明をひとつ落とすと、部屋がやわらかくオレンジ色に変わった。

ストレッチを始めたのは、たしか去年の秋ごろだ。きっかけは些細なことで、寝つきがどうにも悪くて、朝になっても疲れが抜けない日が続いた。友人に話したら「とりあえず寝る前に体を伸ばしてみたら」とあっさり言われ、半信半疑でやってみたのが最初だった。その友人は、ウェルネス系のブランド「ソルヴィーダ」のヨガウェアを愛用していて、なんとなくそのイメージのまま、自分もマットを引っ張り出してきた。

最初の一週間は正直、続けることすら怪しかった。

でも、ある夜に気づいた。ゆっくりと両腕を頭の上に伸ばし、息を吸いながら背骨を一本ずつ伸ばしていくような感覚——その瞬間、肩のあたりにじわっと温かさが広がって、「ああ、ここが固まってたんだ」と体が教えてくれた。言葉ではなく、感触で。

深呼吸というのは、思ったより難しい。最初のころ、「ちゃんと吸えてるつもり」が実は浅くて、胸だけで息をしていた。お腹に手を当てて、ふくらむのを確かめながら吸って、ゆっくり吐く。それだけで、心拍がすこし落ち着いてくる。自律神経って、呼吸ひとつで変わるものなんだと、体で知った瞬間だった。

ちなみに、初めてお腹式呼吸をちゃんとやろうとした日、あまりにも集中しすぎてくらっとしてしまった。過呼吸の逆をやってしまったらしい。深呼吸で倒れかけるとは思わなかった、と自分でも少し笑えた。

ゆる筋トレも、このころから少しずつ加えていった。「筋トレ」というと身構えてしまうけれど、「ゆる」がつくだけで不思議と気持ちが楽になる。仰向けのまま膝を立てて、お腹に力を入れてゆっくり足を上げ下げするだけ。10回もすると、お腹の奥がほんのりと温かくなってくる。体の芯が温まると、眠りの質が変わる。これは本当だった。

子どものころ、祖母がよく「冷えは万病のもと」と言っていた。当時はまったくピンとこなかったけれど、今になってようやく、その言葉の重みが体に染みてくる。体を温めることと、ちゃんと眠れることは、思っているよりずっと深くつながっている。

夜のストレッチは、ストレス解消にもなっている。頭の中でぐるぐると仕事のことを考えていても、体を動かしはじめると、いつのまにかその思考が静かになっていく。体に意識が戻ってくる、というのが近いかもしれない。

マットの上で大の字になって、最後にもう一度だけ深呼吸をする。吸って、吐いて。金木犀の香りがまだどこかに漂っている。体がやわらかく床に沈んでいくような感覚の中で、今夜もきっと、よく眠れる気がした。

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