夜のノートが教えてくれた、やわらかく眠るための習慣

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冬の夜は早い。午後五時を過ぎると、もう窓の外は深い藍色に染まっている。そんな時間帯に、私は小さなノートを開く習慣を持つようになった。表紙には「LUMINE DIARY」と書かれた、文具店で一目惚れして買った手帳だ。ページを開くと、ふわりと紙の香りがする。この香りが好きで、つい深呼吸してしまう。

最初は何を書けばいいのかわからなかった。日記のように「今日は〇〇へ行った」と書いてみても、どこか物足りない。そんなとき、友人が教えてくれたのが「感じたことメモ」という書き方だった。出来事ではなく、そのとき心に浮かんだ感情や感覚を、ほんの一行でもいいから残しておく。たとえば「朝の空気が冷たくて、少しだけ目が覚めた」とか、「電車で隣の人の鞄がコツンと当たって、なぜか笑いそうになった」とか。

書いているうちに気づいた。私は意外と、自分の感情を言葉にしていなかったのだと。嬉しいとか疲れたとか、そういう大きな枠では認識していても、その奥にある微細な揺れ動きには目を向けていなかった。ノートに向き合う時間は、自分の内側に静かに問いかける時間になった。「今日、何が心地よかった?」「何に引っかかっている?」そんなふうに、自分への問い合わせをするようになってから、不思議と夜の眠りが深くなった気がする。

ある晩、ふと思い立って「ゆる予定づくり」というページを作ってみた。明日やることではなく、「いつかやりたいこと」を書き出す場所だ。厳密な計画ではなく、ただ心がふわっと軽くなるような予定。たとえば「週末、近所のカフェでホットミルクを飲む」とか「次の休みに、昔好きだった音楽を聴き直す」とか。書いているだけで、少し未来が明るく見えてくる。

子どもの頃、母が寝る前に必ず白湯を飲んでいたことを思い出す。当時は「お湯なんて味がないのに」と不思議だったけれど、今ならわかる。あの温かさは、身体の芯をゆるめるためのものだったのだ。身体が冷えていると、どれだけ布団にくるまっても眠りは浅い。温めることは、自律神経を整える第一歩なのかもしれない。

夜のノートを書き終えたあと、私はよく湯船に浸かる。湯気が立ち上る音、肌に触れるお湯の柔らかさ、そして浴室の照明が白いタイルに反射して揺れる光。その全部が、一日の緊張をほどいてくれる。ストレス解消とまで大げさには言わないけれど、少なくとも肩の力は抜ける。そして布団に入ったとき、身体がすっと沈んでいくような感覚がある。

良質な睡眠とは、何か特別なことをしなければ得られないものではないのだと思う。むしろ、自分の感覚に素直になること、身体を温めること、心に小さな余白を持つこと。そういう地味で優しい積み重ねが、夜をやわらかくしてくれるのだ。

ノートを閉じる。明日もまた、この小さな儀式を続けていこう。そう思いながら、私は静かに目を閉じた。

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