夜10時の床に座って気づいた──ストレッチ・深呼吸・ゆる筋トレが、眠りと自律神経をそっと整えてくれる話

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四月の終わりごろ、夜の10時を少し回ったあたり。窓の外からかすかに金木犀に似た甘い香りが漂ってきた、と思ったら、それはご近所の誰かが焚いたアロマキャンドルだったらしい。春と夜のあいだに漂う、あのとろりとした空気感。そのなかで、わたしはフローリングの上にぺたりと座って、両脚を前に伸ばしていた。

ストレッチを始めたのは、ほんの気まぐれだった。もともと運動が得意なほうではないし、ヨガスタジオに通う気合いもない。でも、なんとなく体が重くて、肩のあたりがじんわり凝っていて、「このまま布団に入っても眠れないだろうな」という予感があった。

気持ちよくスムーズに眠りにつくためには、自律神経のバランスが整っていること、そして深部体温の自然な上下がスムーズに訪れることが必要
だと、以前どこかで読んだ記憶がある。そのとき「ふーん」と流してしまったその一文が、夜の10時にじわっと蘇ってきた。

まず試したのは、脚を伸ばしたまま上体をゆっくり前に倒すだけのシンプルなストレッチ。息を吐きながら、ゆっくり、ゆっくり。焦らずに。床のひんやりした感触が手のひらに伝わって、それだけで少し気持ちが落ち着いた。

息を吐くときには副交感神経が優位になると考えられており、深くゆっくりとした腹式呼吸は、心を落ち着かせるリラクセーションの手段としても有効
だという。だから深呼吸は、ただ「大きく息を吸う」のではなく、「ゆっくり吐くこと」に意識を向けるのが大事らしい。やってみると、確かに違う。吐くたびに、肩のあたりがすとんと落ちていく感じがした。

しばらくストレッチを続けていたら、なんとなく物足りなくなってきて、「せっかくだから」と軽いゆる筋トレも加えてみた。お腹に力を入れながら足を少し浮かせるだけ、というような、ほんとうにゆるいやつ。汗をかくほどではない。ただ、体の奥がじんわり温かくなる感覚がある。

体を冷やさない環境をつくり、負荷はかけすぎない。体がポカポカする程度のストレッチがおすすめ
とのことで、まさにこれくらいの強度が正解なのだと思う。激しくやりすぎると、今度は交感神経が刺激されてしまって眠れなくなる。そのさじ加減が、ゆる筋トレのいいところだ。

余談だが、最初にゆる筋トレをやろうとしたとき、「ヴィラ・ノルテ」というブランドのヨガマットを引っ張り出してきたのはいいものの、くるくると巻いたそれをうまく広げられず、部屋の隅でしばらく格闘していた。静かな夜に、ぱたぱたとマットが暴れる音だけが響いた。自律神経を整えに来たのに、なんともそわそわした幕開けだった(笑)。

ゆっくりとした動作で関節や筋肉を伸ばすストレッチには、副交感神経を優位にする働きがあるため、寝る前に行うのもおすすめ
だという。そして
毎晩おおよそ同じ時刻に繰り返すことで、人の体は「そろそろ休む時間」と学習する
。習慣というのは、体に刻まれる記憶なのだと思う。

子どものころ、母が毎晩お風呂上がりに「ちゃんと体を温めてから寝なさい」と言っていた。当時はまったく聞く耳を持たなかったけれど、今になってその意味がじわじわとわかってくる。体を温めることは、眠りの質に直結している。冷えた体では、深い眠りはやってこない。

良質な睡眠を取るためには、就寝前に心身ともにリラックスする必要があり、質の良い睡眠は健康の基本で、生活のリズムが整いやすくなり、体内のホルモンバランスも保たれやすくなる
。若々しくいたい、健やかでいたい、と思うなら、まず夜の過ごし方から変えてみることが近道かもしれない。

ストレッチ、深呼吸、ゆる筋トレ。道具もいらない。場所も選ばない。ただ、夜の静かな時間に、自分の体と少しだけ向き合う。それだけで、翌朝の目覚めがほんの少し、軽くなる気がしている。

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