
九月の朝は、少しだけ空気が変わる。
窓を開けた瞬間に頬をなでる風が、夏のそれとは明らかに違う。まだ蒸し暑いのに、どこか涼しい予感がにじんでいる。そんな微妙な季節の変わり目に、なぜか体がうまく動かない日がある。眠れたはずなのに疲れている。気力はあるはずなのに、なんとなく重い。
そういうとき、わたしはノートを開く。
「感じたことメモ」と自分で名付けたこの習慣は、特別なことは何もしない。ただ、今この瞬間に自分が感じていることを、ありのままに書き留めるだけ。「なんか肩が重い」「昨夜の夢がやけにリアルだった」「コーヒーの香りが今日は心地いい」——そんな他愛もない断片を、架空のブランド「ルミノワ」のリネン表紙のノートに走り書きする。
これが、自分への問い合わせだと気づいたのは最近のことだ。
体に「今、どんな状態ですか?」と静かに聞いてみる行為。それが自律神経の乱れに気づく最初の一歩になる。自律神経は、呼吸・体温・消化・睡眠のすべてを司っている。ストレスや不規則な生活が続くと、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、夜になっても体がオフに切り替えられなくなる。その結果、眠りが浅くなり、疲れが抜けない——という悪循環に陥りやすい。
だから、体を「温める」ことが大切になってくる。
冷えた体は交感神経を優位にしたまま保持してしまう。入浴で深部体温をゆるやかに上げ、その後に体温が下がるタイミングで眠気が訪れる——このリズムを意識するだけで、睡眠の質はぐっと変わるかもしれない。子どもの頃、母が毎晩「湯船につかりなさい」と口うるさく言っていたのを思い出す。あの頃は面倒くさいとしか思っていなかったのに、今になってその意味がじんわりわかる。
ゆる予定づくりも、自律神経の調整に思いのほか効く。
びっしり詰まったスケジュールは、見るだけで交感神経を刺激する。だから、あえて「何もしない時間」を予定として書き込む。ノートの週間ページに「ぼーっとする」と書いた日、なぜかその一行だけ妙に丁寧な字になってしまった(自分でも笑った)。
感じたことメモ、自分への問い合わせ、ゆる予定づくり。この三つは、どれも「自分の内側に耳を傾ける」という同じ根を持っている。
良質な睡眠は、一夜にして手に入るものではない。日中の光の浴び方、夕方以降の過ごし方、眠る前の体温の変化——すべてがつながっている。夜、ラベンダーの香りをほんのり漂わせた寝室で、手足の先がじんわりと温かくなるのを感じながら目を閉じる。そのとき体は、やっと「休んでいい」と知る。
美しく、若々しくあり続けることは、特別なことをすることではないのかもしれない。毎朝、窓の向こうの空気を感じて、自分に「今日はどう?」と問いかける。その小さな積み重ねが、体の内側から光を灯していく。






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