
八月の朝、窓を開けた瞬間に蝉の声がどっと押し寄せてくる。熱気と湿気が混ざり合ったあの独特の空気感の中で、わたしはここ最近、小さなノートを手に取るようになった。ブランド名でいえば「Hütte Papier(ヒュッテパピア)」というドイツ発のステーショナリーブランドのリネン表紙のもので、手に持つとひんやりとした布の感触がある。ただそこに、その日感じたことを書き留めるだけ。それが「感じたことメモ」だ。
最初はSNSで流れてきた投稿がきっかけだった。「日記より気楽、ToDoより自由」という一言に、なんとなく背中を押された。
手書きの日記をつけると自律神経が整い、心身をコントロールできるようになるという研究がある。
それを知ったとき、「あ、だからあの朝は落ち着いたのか」と腑に落ちる感覚があった。几帳面に書かなくていい。「今日のお茶、なんかいつもより甘く感じた」でも、「帰り道の風が涼しかった」でも、それで十分なのだ。
感じたことメモを続けていくうちに、もうひとつの習慣が生まれた。それが「自分への問い合わせ」だ。問い合わせ、というとなんだかコールセンターに電話しているみたいで少し笑えるけれど(心の中で「ただいまお繋ぎしております」と聞こえてくる気がして、一人でこっそり吹き出した)、要するに「今日のわたし、体は温かい? 眠れてる?」と自分自身に問いかける時間のことだ。
自律神経は交感神経と副交感神経によって構成され、日中は活動モード、夜間はリラックスモードへと切り替わる。しかしストレスや不規則な生活リズムによってそのバランスが乱れると、睡眠の質が低下しやすくなる。
だからこそ、自分の状態を「言語化して確認する」ことが、思った以上に大切だった。
子どもの頃、母がよく「足が冷えてると眠れないのよ」と言いながら、湯たんぽをタオルでくるんでくれていた。あの温もりの記憶が、今もどこかに残っている。大人になってからも、体の冷えと眠りの浅さはセットでやってくることが多い。夏でもエアコンの効いた部屋で長時間過ごした日の夜は、なんとなくぐっすり眠れない。そういう「感じ」を、メモに書き留めておくと、パターンが見えてくる。
不規則な生活習慣や過度の疲労、ストレスがかかり続けると、自律神経が乱れて睡眠の質が低下しやすくなる。
だからこそ、体を温める習慣と、眠る前のちょっとした儀式が、じわじわと効いてくる。
そこで取り入れたのが「ゆる予定づくり」だ。ガチガチのスケジュール管理ではなく、「今夜は湯船に15分浸かる」「明日の朝は白湯を飲む」という、やさしくて小さな予定を手帳の余白に書き込む。
就寝前の軽いストレッチや深い呼吸でリラックスすることが、深い睡眠につながる。
そういった積み重ねが、自律神経を穏やかに整えていく。
感じたことメモ、自分への問い合わせ、ゆる予定づくり。この三つはどれも、五分もあればできる。でも続けていると、朝の目覚めが少し軽くなり、夜の眠りが少し深くなっていく感覚がある。美しく、若々しくあり続けたいなら、特別なものを足すより先に、自分の内側の声を聞くことから始めてみてほしい。ノート一冊と、正直な気持ち。それだけで、今日はもう十分かもしれない。






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