夜9時のストレッチが、眠れない私を変えた話

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秋の気配がほんのり漂いはじめた夜、窓を少し開けると、外から金木犀に似た甘い香りが流れ込んできた。まだ残暑の名残もあるのに、風だけがちゃんと季節を知っている。そんな9月の夜9時ごろ、私はようやくスマホを手放して、フローリングの上にぺたりと座った。

きっかけは些細なことだった。友人の勧めで「ノルディア・ウェルネス」というオンラインのセルフケアブランドを知り、そこで紹介されていたナイトルーティンの動画を何気なく再生したのだ。ストレッチ、深呼吸、ゆる筋トレ。たった15分のプログラム。「これくらいなら続けられるかも」と思った、その軽さが正解だった。

眠るためには、自律神経のバランスが整っていること、そして深部体温が上がった後に下がっていくことが必要だ。
でも当時の私はそんな仕組みをまったく知らなかった。ただ、眠れない夜が続いていた。布団に入っても頭だけがぐるぐると回り続けて、気づくと深夜1時。翌朝は重い瞼のまま通勤電車に揺られる。それが当たり前になっていた。

最初にやってみたのは、深呼吸だった。
4秒かけて息を吸って、8秒かけてゆっくり吐く。お腹をへこませ、背中に空気を押し込むようなイメージで。
たったそれだけなのに、3回繰り返すと肩がふわりと落ちた。「あ、こんなに力が入っていたんだ」と、自分の体に少し驚いた。

次に、ストレッチ。首をゆっくり横に倒すと、右側がぎしっと鳴った。鳴った瞬間、思わず「ごめんね」と首に謝ってしまった。誰もいない部屋でひとりごとを言う自分が少しおかしくて、口元が緩んだ。

自律神経ストレッチは、お風呂上がりや寝る前に行うのが特に効果的で、体が温まって筋肉が柔らかくなっているので、無理なくほぐれ、副交感神経が働きやすいタイミングだ。
それを知ってから、入浴後にストレッチをするのが習慣になった。ぬるめのお湯でゆっくり温まり、バスルームから出たら、まだ体がほんのり熱いうちにマットの上へ。その順番を守るだけで、体の反応がまるで違う。

ゆる筋トレも加えた。腹筋を「ガッ」とやるのではなく、息を吐きながらお腹を薄くするだけ。それを10回。子どもの頃、体育の授業でやらされた上体起こしとは似て非なるものだと思った。あのころは「きつい」しか感じなかったのに、今は不思議と「気持ちいい」が先にくる。

自律神経が整ってくると、睡眠の質が向上して深く眠れるようになり、朝の目覚めもスッキリとしてくる。
実際、2週間ほど続けたころから、布団に入ってすぐ眠れるようになった。以前は1時間以上かかっていたのに、今は気づいたら朝になっている。

体を温めること、丁寧に呼吸すること、そして眠りの質を大切にすること。どれも「当たり前のこと」に聞こえるかもしれない。でも当たり前のことを、ちゃんと毎日やるのは、意外と難しい。夜9時のフローリング、金木犀の風、首への小さな謝罪。そういうひとつひとつが積み重なって、私の夜は少しずつ変わっていった。

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