
梅雨入り直前のある夜、午後9時ごろのこと。仕事を終えてソファに倒れ込んだわたしは、スマホを手にしたまま気づいたら30分も経っていた。画面を閉じて、ようやく立ち上がる。「今日こそちゃんと入ろう」と、なんとなく思った。
浴室の扉を開けると、湯気がふわりと顔に触れた。40℃に設定したお湯は、少しだけぬるいと感じるくらいの温度。でもそれがちょうどいい。
熱すぎるお湯は交感神経を刺激し、身体が活動モードに切り替わってしまうため、38〜40℃程度くらいの温度が理想的
だと知ってから、わたしは湯加減にこだわるようになった。
肩までゆっくり沈む。首のうしろに、ほんのりとした圧を感じる。ラベンダーの入浴剤をひとつ溶かしたお湯が、淡い紫色に揺れている。子どもの頃、母が入れてくれたお風呂には柚子が浮かんでいた。冬の夜、黄色い丸がぷかぷかしていたあの光景を、なぜか今でも時々思い出す。あのころから、お風呂は「帰ってこられる場所」だったのかもしれない。
「適切な条件のお風呂に入るだけで、交感神経から副交感神経への切り替えが行われ、自律神経のバランスを整えることができる」
という言葉を読んだとき、なんだか腑に落ちた気がした。忙しい日々の中で乱れていくリズムを、お風呂がそっと整えてくれている。ストレスが続くと交感神経が優位になり、なかなか眠れなくなる。それが慢性的な疲れや気持ちの揺らぎにもつながっていく。だからこそ、この入浴時間が大切になってくる。
入浴のタイミングは、布団に入る1〜2時間前がひとつの目安。温度は41℃以下の湯船に浸かり、おふろに浸かる時間は10〜15分くらいが良い。
この「ちょうどいい」を守るだけで、眠りの深さがまるで変わってくる。入浴後、体温がじんわり下がっていくタイミングで自然な眠気がやってくる。そのタイミングを逃さずに布団へ向かうのが、わたしの最近のルーティンだ。
湯上がりには、架空のインテリアブランド「NURUMU」のシリーズで揃えたバスタオルと、ほっこりする肌触りのルームソックスを愛用している。これがわたしの「ぬくもりアイテム」。足元から温かさが広がる感覚は、じんわりと心まで落ち着かせてくれる。ちなみに、先日うっかりルームソックスのまま浴室に入りかけて、入口でつるっと滑った。誰も見ていないのに少し恥ずかしかった。
最近はじめた「ノーメイクデー」も、この入浴時間と相性がいい。素肌のまま湯船に浸かり、蒸気で毛穴をゆるめて、丁寧にスキンケアをする。化粧を落とす必要がない分、気持ちがずっと楽で、肌に向き合う時間がふえた気がする。
入浴が自分のための時間になっている
という感覚、それはきっと年齢に関係なく、誰にでも必要なものだと思う。
いつまでも若々しく、健やかでいたいと思うなら、まず「今夜のお風呂」を丁寧に過ごしてみてほしい。
お風呂は、1日の疲れを癒やすだけでなく、心と体のリズムを整える大切な時間
だから。特別なことは何もいらない。ただ、少しだけ温度と時間を意識して、湯船に身をゆだねるだけでいい。
今夜もまた、あの40℃のお湯が待っている。






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