
春の終わりかけ、夜の9時すぎ。窓の外からかすかに雨の匂いがして、今日もなんだか長かったなと思いながらバスルームのドアを開けた。湯気がふわっと顔にかかる。その瞬間だけ、一日分の緊張が少しだけ緩む気がした。
お風呂は単に身体を洗うためだけでなく、心身のリフレッシュや思考を整理するための「特別な空間」として活用するのがおすすめ
、とはよく言われること。でも実際にそれを体感できるようになったのは、意識して**入浴時間**を変えてからだった。
以前のわたしは、シャワーで5分、それで終わり。洗い流すだけの毎日。でも友人に勧められた「ヴェールノワ バスオイル」(架空)を試した夜から、なんとなく湯船に浸かる習慣が戻ってきた。ほのかにラベンダーとユズが混ざったような香りで、正直「これ本当にオイル?」と思いながら湯船に一滴たらしたら、お湯がとろりと変わった。そのとろみが肌に触れたとき、ああ、これだ、と思った。
お湯につかることで副交感神経が優位になりメンタルが整えられる
という話は知識として知っていたけれど、実感できたのはずっと後のこと。38〜39℃くらいのぬるめのお湯に15分ほど浸かっていると、肩の力が少しずつ抜けていく。手足の先がじんわり温かくなって、心の中の「早くしなきゃ」という声が静かになっていく。
そういう夜は、**ノーメイクデー**にしている。ファンデもコンシーラーも全部オフにして、素顔のまま湯船に入る。鏡に映るすっぴんの自分を見て「あ、今日は顔色いいな」と思えたり、逆に「疲れてるな」と気づいたり。すっぴんで自分と向き合う時間は、思いのほか正直で、思いのほか優しい。
子どもの頃、祖母の家のお風呂は木でできていて、入るたびに湿った木の香りがした。湯船の縁に手をかけながら、祖母が「ゆっくり温まりなさい」と言っていた声を、今でもときどき思い出す。急がなくていい時間、というものを初めて教えてもらった場所が、あのお風呂だったかもしれない。
就寝の1〜2時間前の入浴が、睡眠の質の向上につながる
ことも、今ではしっかり実感している。お風呂上がりに体温がゆっくり下がっていくタイミングで布団に入ると、いつもより早く眠れる。深く眠れる。翌朝の目覚めが、全然違う。
最近はバスタイムに**ぬくもりアイテム**を取り入れるようにもなった。湯船の縁に置いた小さなキャンドル(ちなみに一度、間違えてアロマストーンをそのままお湯に入れそうになったのはここだけの話)、温かみのある音楽、ハーブティーを一杯。そういう小さな準備が、「今夜のお風呂は特別な時間にする」という気持ちをつくってくれる。
バスタイムを美容や癒しの「有意義な時間」と捉える人が増加している
という流れは、きっと偶然じゃない。忙しい毎日の中で、自分を後回しにしてきた人たちが、少しずつ「自分を温める時間」を取り戻しているのだと思う。
湯船に浸かりながら、天井を見上げる。何も考えなくていい。ただ、温かい。それだけで、明日がちょっと違って見えてくる。






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