
五月の朝はやさしい。カーテンの隙間から差し込む光が、うっすら白くて、でも少しだけ温かい。その光を見ながら、ふと思う。「最近、ちゃんと眠れているかな」と。
寝起きの感覚というのは、案外正直だ。すっきり目が覚めた朝は、なんとなく一日が明るく感じられる。反対に、重たいまぶたのまま起き上がった日は、コーヒーを一口飲んでもどこかぼんやりしている。質のいい睡眠がどれほど大切か、頭ではわかっていても、実際に体で感じるとまた違う話になってくる。
そんなある日から、「感じたことメモ」を始めた。難しいことは何もない。ノートを一冊用意して、その日に感じたことをただ書くだけ。「今日は肩が重かった」「夕方になると手足が冷えた」「昨夜は眠りが浅かった気がする」。そういうことを、短くでいいから書き留めていく。最初の三日間は続いたのに、四日目にノートをどこに置いたか忘れてしまったのはここだけの話として(ソファの下にあった)、その後は習慣になった。
書いていくうちに、気づいたことがある。体が冷えている日は、決まって眠りの質が落ちているということ。冷えというのは、ただ寒いというだけじゃなく、自律神経の乱れと深くつながっている。自律神経が乱れると、体温調節がうまくいかなくなり、血流が滞り、夜になっても体がうまくスイッチを切れない。結果として、眠れない夜が続く。
子どもの頃、祖母がよく言っていた。「足を温めると、よく眠れるよ」と。当時は半信半疑だったけれど、今になってその言葉の意味がわかる気がする。足湯でも、湯たんぽでも、ぬるめのお風呂でも。体の芯からじんわりと温まると、副交感神経が優位になり、体が「休んでいいよ」というモードに入っていく。
そこで取り入れたのが、「ゆる予定づくり」だ。スケジュール帳に書くのは仕事の予定だけじゃなく、「今日は湯船に入る」「夜9時以降はスマホを置く」「寝る前に白湯を飲む」、そういうことも一緒に書く。インテリアブランド「ノルテ・ルーム」のウォールカレンダーに書き込むのが最近のお気に入りで、壁に貼ってあるから自然と目に入る。
「自分への問い合わせ」という言葉が、最近じわじわと広まっている。他の誰かの声ではなく、自分の体や心に「今どんな状態?」と問いかけること。感じたことメモは、まさにその入口になる。書くことで、自分の体のリズムが少しずつ見えてくる。どの曜日に疲れやすいか、どんな食事の後に眠りが浅くなるか。データというより、感覚の記録。
ストレスは、気づかないうちに積み重なる。日々の「感じたことメモ」を読み返すと、「あ、先週からずっと肩が凝っていたんだ」と気づくことがある。そのことに気づけただけで、少し楽になる。自分の状態を知ることが、ストレス解消の第一歩になるから。
夜、白湯を飲みながらメモを書く時間は、一日の中でいちばん静かな瞬間かもしれない。湯気がほわっと顔に当たる感じ、ペンが紙の上を走る音、窓の外でたまに鳴く虫の声。それだけのことなのに、不思議と体がほどけていく。温かくして、ゆっくり眠る。それが、いちばんシンプルな若さの秘訣なのかもしれないと、今は思っている。






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