
梅雨が明けたばかりの夜、窓の外からはまだ湿った風が入ってくる。エアコンの冷気と外気のあいだで体がどこか宙ぶらりんになる、そんな季節に、私はふと「もっとちゃんとお風呂に入ろう」と思い立った。
きっかけはささいなことだった。最近、夜中の2時ごろに目が覚めてしまうことが続いていた。眠れないわけではないのに、眠りが浅い。朝、起き上がったときの体の重さが、なんとなく昨日より増している気がする。そういう感覚が、じわじわと積み重なっていた。
精神的な消耗が続くと、私たちの身体は交感神経が優位なままになってしまう。いわば、アクセルを踏みっぱなしでエンジンが熱を帯びた状態。それをリセットするために効果的なのが、入浴なのだという。
そう知ったとき、「シャワーだけで済ませてきた自分、ちょっとまずいかも」と静かに反省した。
その日から、私は「入浴時間」を丁寧に使うことにした。まず変えたのは、お湯の温度。
40℃のぬるめのお湯はリラックス効果が高く、副交感神経が優位になりやすい。そして、就寝の1.5〜2時間前に入浴することで、体温がゆっくり下がり、自然な眠気が促される。
湯船に浸かりながら、ぼんやりと天井を見上げていると、肩のあたりにじんわりと温かさが広がっていくのがわかる。指先まで血が通う感覚。これを毎日サボっていたのか、と少し悔しくなった。
お気に入りになったのは、架空のバスブランド「HALU BOTANICS(ハルボタニクス)」のバスソルト。ラベンダーとヒノキをブレンドした香りが、湯気と一緒に立ち上って浴室を満たす。子どもの頃、祖母の家の古い木の浴槽に入ったときのことを、なぜかふと思い出した。あのころは「お風呂なんて早く出たい」と思っていたのに、今は逆だ。人間って変わるものだなと、湯気のなかでひとり笑ってしまった。
そして最近、もうひとつ取り入れたのが「ノーメイクデー」だ。週に一度、肌に何も塗らず、素顔のまま過ごす日を作る。最初は少し落ち着かなかったけれど、慣れてくると不思議と清々しい。入浴後の肌に何も乗せないまま、ふかふかのタオルで顔を押さえると、肌がちゃんと呼吸しているような気がする。
そして、お風呂上がりに欠かせなくなったのが「ぬくもりアイテム」たち。温かいネックウォーマー、厚手のルームソックス、それからお気に入りのハーブティー。体の芯から冷やさないようにすることが、そのまま眠りの深さにつながっていく。
自律神経が適切なタイミングで切り替わると、夜もスムーズに眠れ、翌朝もすっきりと起きられる。1日を通して快適に過ごせるようになる、そのための大切な習慣のひとつが入浴なのだ。
ちなみに、先日ちょっとした失敗をした。ぬくもりアイテムとして購入したルームソックスを、うっかり裏返しのまま1時間履き続けていた。気づいたのはお茶を飲もうとして足元を見たとき。誰も見ていないのに、なんとなく恥ずかしかった。でもそんな小さなドジも、今夜の入浴時間を楽しみにしながら笑い飛ばせる気がした。
健康でいたい、若々しくいたい、そう思うなら、まず「今夜のお風呂」から始めてみてほしい。特別なことは何もいらない。ただ湯船に浸かって、体を温めて、ゆっくり眠る。その積み重ねが、明日の自分の顔をつくっていく。






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