
九月も半ばを過ぎると、夕暮れが少しだけ早くなる。窓の外がオレンジから藍色に変わるころ、ふと「今日も頑張ったな」と思う瞬間がある。そんな夜に、わたしはお風呂の蛇口をひねる。
最近、ノーメイクデーを週に一度つくるようにした。肌を休ませたくて始めたことなのに、気づいたらその日の夜の入浴時間がいちばん好きな時間になっていた。素顔のまま湯気の中に座って、ただ温かさに身を委ねる。それだけで、なぜかひとつ深く息ができる気がする。
お風呂に浸かると、お湯の温度や感じ方に応じて交感神経と副交感神経のスイッチが切り替わり、自律神経のバランスを整えてくれる。
忙しい日々の中でアクセルを踏みっぱなしにしてきた神経が、ようやく「もういいよ」とゆるむ感覚。それが入浴の、いちばん正直な恩恵だと思う。
子どもの頃、母がお風呂に「ゆずの香り」の入浴剤を入れてくれていた。あの黄色い小さな袋をお湯に溶かすと、浴室全体がほわっと柑橘の香りに包まれた。今でもその香りを嗅ぐと、あの狭いお風呂場と、湯気で曇った鏡の記憶がよみがえる。五感って、不思議なほど正直だ。
38℃程度のぬるめの湯に入ると副交感神経が刺激され、オフモードになりやすいとされている。
だから最近は、熱すぎないお湯を意識している。最初は「ぬるくない?」と感じるくらいがちょうどいい。しばらく浸かっていると、肩の力がじんわりほどけてくる。その感触が、たまらなく好きだ。
30〜50代の男性、40〜60代の女性の4人に1人が慢性的な不眠状態にあるという調査結果もある。
睡眠の質は、美しさや若々しさに直結する。肌の再生も、ホルモンバランスの調整も、眠っている間に体が行う仕事だから。夜の入浴時間を丁寧に過ごすことは、そのままぐっすり眠るための準備になる。
ぬくもりアイテムも、最近は積極的に取り入れている。わたしが気に入っているのは、「ルミナスバス」というブランドのバスソルト。粗塩とラベンダーのブレンドで、お湯に溶かした瞬間にふわりと広がる香りが、一日の終わりにちょうどいい。湯船の中で目を閉じると、光の残像がゆっくり消えていく。
先日、入浴中にうとうとしてしまい、気づいたら湯船の中で頭がこっくりしていた。「寝たら危ない!」と自分でツッコミを入れながら慌てて起き上がったけれど、それだけ深くリラックスできていた証拠だと、前向きに解釈することにした。
ぬるめのお湯での入浴は副交感神経を高め、心身のリラックスにつながる。
ストレス解消というと、何か特別なことをしなければいけない気がするけれど、実はお風呂という日常の中にこそ、その答えがある。
毎日15分でいい。ノーメイクデーの夜でも、忙しい平日の夜でも、湯船に浸かるその時間を、自分への小さな投資だと思ってほしい。体が温まると、心もほどける。そしてほどけた心は、深い眠りへと自然に落ちていく。今夜の入浴時間が、明日の自分をそっと支えてくれる。それだけで、もう十分だと思う。






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