温かいごはんと、やさしい会話が整えてくれるもの

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夕方の5時を過ぎると、台所からふわりと出汁の香りが漂ってくる。その匂いだけで、なんとなく肩の力が抜けていく気がした。今日も長い一日だったな、と思いながら、椅子に腰を下ろす。

一緒にごはんを食べる、ということ。それが持つ力を、大人になってからじわじわと実感するようになった。子どもの頃は当たり前すぎて気にも留めなかったのに。母が黙って温かい味噌汁を出してくれるだけで、どこかほっとしていた記憶がある。言葉なんてなくてもよかった。ただ、湯気が立っていればそれでよかった。

最近、友人と「ハルカゼ食堂」という小さな定食屋に行った。カウンター席で肩を並べて、とりたてて深い話もせず、ただ「これ美味しいね」「ほんとだ」と繰り返していた。そのとき友人が、熱々の湯呑みを両手で包みながらふうっと息を吐いた。その仕草が、なぜかとても印象に残っている。言葉より先に、身体が「安心している」と言っていた。

自律神経というのは、案外正直だと思う。緊張が続けば体は冷える。呼吸が浅くなる。眠れない夜が続くと、翌朝の目覚めがどんよりと重くなる。そういうサイクルに一度はまると、なかなか抜け出せない。でも逆もまた然りで、温かいものを食べて、誰かとゆっくり話して、笑って、それだけで体の内側からじんわりと何かが緩んでいく感覚がある。

身体を温めることは、思っている以上に大切なことだ。特に末端の冷えは、睡眠の質にも影響する。眠る前に足先が冷たいままだと、なかなか深い眠りに入れない。だから夜は湯船に浸かる。ゆっくりと、10分でも15分でも。それだけで翌朝の感覚がずいぶん変わる。

「小さなありがとう」を声に出すことも、自分では意外と効いていると感じている。「ありがとう」と言うとき、人は少し表情が柔らかくなる。言われた方だけじゃなく、言った方も。そのほんの一瞬の緩みが、ストレスで固まった何かをほどいてくれるような気がしてならない。

ちなみに先日、友人に「ありがとう」と伝えようとして、なぜか「ありがとうございます」と敬語になってしまった。思わず二人で笑ってしまったけれど、それはそれで悪くなかった。笑えるなら、それでいい。

やさしい会話は、特別なことを話さなくていい。今日の天気でも、食べたものでも。ただ、誰かの声を聞いて、誰かに聞いてもらう。その往復が、自律神経をそっと整えてくれる。温かいごはんと、小さな言葉と、ちゃんと眠れる夜。それだけで、明日の自分はずいぶん変わってくる。

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