
梅雨の手前、5月の夕方というのは妙に長い。窓の外がまだ明るいのに、なんとなく体だけが重い。そんな夜が続いていた。
スマートフォンを手放せない日々が続いたある晩のこと、お気に入りのマグカップに「ヴェールノワール」というブランドのハーブティーを注いだ瞬間、ふわりとカモミールの香りが鼻をくすぐった。温かい湯気が指先に触れる、ただそれだけのことで、なぜか胸の奥がほっとした。そういえば、こんなふうに「何もしない時間」を持ったのはいつぶりだろう。
現代を生きる私たちの身体は、知らず知らずのうちにロックがかかっている。情報の洪水、夜中まで光るスクリーン、途切れない通知音。
ブルーライトを浴び続けると自律神経が乱れ、朝目が覚めても夜眠くならない生活リズムへと狂ってしまう
。これは意志の問題ではなく、体の仕組みの問題だ。だから、必要なのは「頑張ること」ではなく——**リセット解除**、つまり固まった体と心のロックをそっと外してあげることなのかもしれない。
子どもの頃、祖母の家では夜になると必ずお風呂に入る習慣があった。熱すぎず、ぬるすぎない湯加減で、首までゆっくり浸かる。あの時間が何より好きだった。大人になってシャワーで済ませるようになってから、なんとなく眠れない夜が増えた気がするのは、気のせいではないかもしれない。
体温が下がり始める時間に眠らないと深い眠りが得にくく、成長ホルモンの分泌も減りやすい
。体を温めるという行為は、良質な睡眠への入り口でもある。
デトックスというと、何か特別な食事制限や高価なサプリを思い浮かべる人もいるかもしれない。でも本当のデトックスはもっとシンプルだ。
デジタルデトックスとは情報を拒絶することではなく、少し立ち止まり、情報の流れから一度降りて自分の軸を再確認する時間のこと
。スマートフォンをナイトテーブルから遠ざけて、代わりにお気に入りの香りのバスソルトを湯船に溶かす。それだけで、脳の緊張がほぐれていく感覚がある。
ちなみに、初めてスマホを寝室に持ち込まないと決めた夜、習慣の怖さか、気がついたら充電コードを握ったまま眠りかけていた——という小さな失敗談はここだけの話にしておこう。
自律神経研究の第一人者である医師の小林弘幸氏によれば、「悪い流れに引きずり込まれないように流れを断ち切り、いい流れに変えること」こそがリセットの本質
だという。自律神経を整えることは、ストレス解消にも、若々しさを保つことにも深くつながっている。
だからこそ、今夜は自分にご褒美を。湯気の立つハーブティー、ほんのり温かい足湯、スクリーンのない静かな30分。それが積み重なったとき、体は少しずつリセット解除されていく。眠れない夜を「仕方ない」と諦めるのではなく、自分の体に耳を傾けることから始めてみてほしい。
朝、目が覚めたとき、窓から差し込む光が少しだけ違って見える日がきっとくる。






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